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ああ・・過ぎゆく日々の戯れ言よ・・・
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「良くいらっしゃいました。お疲れでしょう? あ、お名前は?」
「クワトロ・バジーナです」

品の良い夫人にそう告げて案内された2階へと上がる。木の軋む音が新鮮だった。
私のこの名前は偽名である。本名を出すと厄介なので好んで使っている名前は3つ
遙か昔のスペースノイドの英雄、シャア・アズナブルが使っていた名前
私は、彼に傾倒しシャアを名乗るが、それも公になりつつあるのでこの名前を使った
部屋はこぢんまりとし、開け放たれた窓からは美しい緑と心地よい風が吹き込んだ

「ちょっと前まで、馴染みの男の子が使っていたの」
「先程言っていた、カミーユ君ですね」

そう。あのアムロにまとわりついていたカミーユは今宇宙に帰っている。
そうそう地球には滞在出来ないのだ。文化も、薬品までもこの地球には制限がある
だが、彼も若い研究者でこの月の終わりには戻ってくると言う
丁度それまでが私に許された滞在期間なのだ。ここにも、日本にも。

「あの子は」
「ああ、アムロね?親戚の子なの。お父様が宇宙に用事があって家で預かっていますの」

子供は平気かしら?と彼女が聞くので大好きですよ、と答えた。
…本当は子供など嫌いだ。煩いし、汚いし、やかましい事この上ない。
だからこの高まる期待も、実際に彼に接すれば萎むのではないかと予想している
私はペドではないし、この変な高揚感も気の迷いだったかと確信に変わることを願っている
でも、取り敢えずは接触せねば始まらない。なのでニッコリと得意の笑みでそう返した
夫人から粗方ここのシステムを聞き終わると、私は荷物を崩し窓に寄りかかる

「こんにちは」
「……………こん、に、ちは」

アムロに話しかければ、彼はもじもじと視線をそらして辿々しい挨拶を返した
私は窓の上からアイスを舐める彼を見る。シャツから覗く手足を…余すことなく

「今日からここにお世話になる。クワトロだ…君は?」

もう知っているがね。最初は大事だ、私はサングラスを外し彼を見つめる
日差しが痛いが、彼をもっと良く見たかった

「アムロ!」

不意に寄こされた視線は真っ直ぐで、それに興味が引かれる。
ああ、その瞳だ。私を真っ直ぐに貫く意志の瞳 ……??私は何を考えている?
よぎった何かの気配に頭を振って、彼に声をかけようとした
もっと声が聞きたい…もっと姿を焼き付けたい…もっと君を、感じたい。
こんな欲求は、私は知らない。かつて無い程の衝動に、私は目眩を感じる

「アムロ君…」

ここに来ないか?と誘おうと思ったが声をかけると同時に彼は走り去ってしまった
それに失望と安堵を感じた。
今、彼をここに呼んでしまえば私は間違いなく彼を貪ってしまっただろう。
それは不味い。とてもとても。ああ、この高まる欲求は納まりそうに無い。
……ならば慎重に事を運ばなければいけない。
こっそりと、ゆっくりと…彼を言いくるめ、私のものに。
ああ、それは何て甘美なのだろう。
最初から手に入らないのは分かってる、ならば奪ってしまえばいい
私とアムロは水と炎だ。相容れないが求め合っている、常に。あの時も、あの時も…



私は何を言っている?

蝉がミーンミーンと泣き叫ぶ。それを私は哀れに思う。
一瞬の輝きの短さに、生という眩いばかりの慟哭に、何かを祈らずにいられようか。
永遠はない。だから今を甘受する。もがき、苦しみ、何かを手に入れようと躍起になる
蝉が鳴く。ああ、もっと鳴くがいいさと私は思う
そして私も蝉のように叫べたらどんなに良いだろうと思った。
この思いは、何だろう
私はただ、君が欲しくて堪らなかった。
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自己紹介:
雄と言えなくもないメス科。
なんかそのへんふらふらしてたらあっというまに年をとってた、熟れすぎの果実。(果実は言い過ぎだろーが!!)
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